17 Jun,2022
ビューティライターのAYANAと申します。
濱田マサルさんとブランエトワールのみなさまのご厚意で、こちらに文章をしたためさせていただく運びとなりました。どうぞよろしくお願いいたします。
「かぶらない猫の話」とは何か。要するに演技ができないということです。嘘がつけないといえばなんか誠実な人かもしれんなみたいに聞こえますが、機転がきかない、すぐ顔に出る、我慢できない、みたいな褒められたものじゃない性質とも言うことができ、私のこの幼稚なキャラが甘えから来ることは自分でもよく自覚しています。
人には色々な役割があると思います。私であれば46歳になったばかりのひとりの女性であり、小学生の息子のシングルマザーであり、一匹の猫を世話する人間であり、文章を書くフリーランスのビューティライターであり、文章講座をやる講師であり、化粧品の企画なんかもやる人間であり、コンビニに行けば客になります。その役割に応じて顔を変える、モードを変えることが私にはなかなかできません。いつも同じ。私が忠実なのは、私の機嫌に対してでしかないのかもしれません。まったく、ずいぶん幼稚な話です。
私はインターネットが大好きなのですが、好きな韓国アイドルについて何かを発信するとき(たとえばTwitter)、私はいつも考えます。アカウントを分けたほうがいいんじゃないかと。現在、アイドルの話をした5秒後に息子の話をし、間髪入れずに化粧品について話すような、混沌としたアカウントを運営するに至っています。これはマジでどうなんでしょうか?令和のネットリテラシー的に配慮のある行為と言えるのでしょうか。そんなふうに毎日うっすら思っているんです。しかも実名です。ビューティライターのAYANAさんって韓国アイドルのことしかツイートしない人だよね、本当に美容の人?信用ならないわと思われているかもしれない。
でも、心のどこかで、このままの自分でどこまで行けるか試してみたい、そんな気もしているんです。いつもモードが変わらない私、猫をかぶらない私にとって、ジャンルによって発信チャネルを変えるというのは、自分自身を分断するようなものです。分断によって整理されるものはたしかにあります。でも、ごちゃ混ぜだからこそ面白いものが生まれるのでは?と、まるで面白いものを生み出している前提のような図々しいことを考えてしまいます。
そんなわけで、私は別に公の顔を持っているインフルエンサーじゃないのだし、自分らしさでまずはやってみようじゃないかという結論にいつも落ち着きます。クライアントの皆様にご迷惑をかけない程度に。
と、長々とかぶらない猫について説明してしまいました。かぶらない状態で、日々ビューティライターとして、シングルマザーとして、中年女性として存在している私の冴えない日常、仕事の話もプライベートの話も、をここでお伝えできたらと思っています。
ビューティライターってきっと多くの人の憧れの職業ですよね?ライターがまた人気の職業にランクインしているという話を聞きます。けれど私自身は非常に地味ですし、本当に余裕のない毎日を送っています。高校生くらいから持っている「自分には何の才能もない、これからどうやって生きていけばいいんだろう」という焦燥感を、なんと46歳の今も色褪せないまま持っています。その鮮度の高さに我ながら驚きます。これは墓場まで持っていきますね確実に。
美容の世界は大好きですけれども、じゃあ家の中が美に溢れているかというとまったくそういうことはなく、かつて働いていた化粧品会社で「いつも掃除をして美しさを保ちなさい、ビューティアドバイザーはお店を舞台とした女優だという自覚を持ちなさい」とあれほど叩き込まれたにも関わらず、化粧品と書籍と服と息子の謎工作と韓国アイドルのデカバッケージCD等に埋め尽くされた空間のない空間で生活をしております。
本当に美容の人?信用ならないわとなるかもしれませんが(2回目)、こんな人でもビューティライターを名乗ってもいいんだ、もとい生きてても許されるんだ、とちょっぴりホッとしていただけたら幸いです。
TEXT : AYANA