Vol.6 平元敬一さん<後編>

22 Sep,2021 #プロの領域。プロの聖域。

Vol.6

guest
ヘア&メイクアップアーティスト 平元敬一さん




長年にわたり第一線で活躍するクリエイターをゲストに迎え、ファッションからビューティ、ライフスタイルまで。それぞれのこだわりや美のフィロソフィーについて語り合います。







濱田さん(以下MASARU)

今後、ヘアメイクという職業はどうなっていくと思われますか?

平元さん(以下KEIICHI)

残念ながらヘアメイク人口は減っていくような気がします。ゼロになることはないけれど、雑誌も減っていますし、広告などの形態も変わってきている。アシスタントはとっていませんが、危機感も生まれていて、次の世代に僕たちが持っている技術をちゃんと伝えたい、アシスタントをきちんと育てたい、とも思いはじめています。興味がある人がいれば…。

MASARU

技術を受け継いでいく事は本当に大切な事ですよね。僕、改めて学校に行きたいな!と思う事がよくあるんです。改めて、基本的な技術を学び直してみたいので、是非お願いします!(笑)

KEIICHI 

いまは美容師が取得する技術の内容も変わってきています。昔は、まったくトレンドに必要のない技術も学ばないといけなかった。道具が進化した分、技術が退化していく危機感を感じることも。和髪も道具を作れる職人がいなくなって、くじらのひげの代わりにピアノ線など、材料がないので仕方なく自分で作ることもあるんです。



MASARU

ヘアメイクのお仕事って、永遠に学びながら成長するゴールの無い職業だと思うんですが、平元さんはこの仕事を辞めたい。とか、休みたいと思ったことはありますか?

KEIICHI 

じつは、27歳のときに一度仕事を辞めたんです。外人モデルとの仕事が多く、英会話が必要だったんですがまったくできなくて、ボストンに語学留学をしていました。

MASARU

そうだったんですね!今の僕は、撮影のお仕事との距離があるのですが、その距離が逆に心地良く、ヘアメイクとしての自分自身とより向かい合えている気がします。

KEIICHI

僕自身も自分と向き合うことが増えましたね。現場の仕事とは別に、持っている技術を教えたいなと思い始めていて。アシスタントを募るとか、プロ向けのレッスンをスタートさせるなど、そういうタイミングにきているのを感じています。

MASARU

ブランエトワールのお客様や顔診断に来てくださる方に、これさえあればキレイになれる秘訣を教えて下さいって聞かれることがあるのですが、平元さんならなんて応えますか?美しく見えるのは、物質的・平面的なことだけではなく、自然に醸し出されるものでもあると思うのですが。

KEIICHI

美しさは品格や佇まいとか、要はバランスですよね。過度に人工的でツヤツヤしている肌や髪って実はわざとらしく見えて、その人の本当のキレイを引き出せていなかったり。キレイじゃないのにそう思いこんでいる人が多いような。

MASARU

なかなか本質を言葉で伝えるのは難しいですね。でも、平元さんが手掛けるモデルさんたちはみなさん、個々のスタイルを持ちながらも清潔感や品があって知性を感じます。それは平元さんのヘアメイクの力も大きいと思うんです。

KEIICHI

リアルクローズの時代、空気感や心地よさがディテールにさり気なく出るように意識しています。モデルとも距離感を詰め過ぎず、ヘアメイクが終わったらそっとバックヤードに下がる(笑)撮影しながら徐々に崩れていきますが、最初にきちんと作っておけば崩れても美しいまま。完璧だけがすべてではありません。ヘアメイクの現場はここ5年で、あふれる情報とデジタル化によって変わりましたね。スピード感が重視されて、必要なものまで削り取られるように。薄く、軽くなっているような気がしています。



MASARU

同じように感じています。だからなのか、僕自身がブレのないオーセンティックなクリエイターの方々とつながっていたいと思うように。好きな紙や印刷物で、その本質を伝えられないかなと模索し続けています。SNSの登場で得たものはあるけれど、失ったものもたくさんある。これから先どんな時代になるのでしょうね。

KEIICHI

オーセンティックなものは残っていって欲しい。僕が多くの先輩達から受け継いだ技術を伝えられるチャンスも模索していきたいですね。

MASARU

平元さんの技術を見たい人はたくさんいると思います! 今日はヘアメイクという仕事に対しての可能性や気付きなど、さまざまなお話をすることができました。本当にありがとう御座いました。


TEXT :SAWAKO ABE