VOL.5「料理上手=美容上手」

06 Aug,2021 #美容迷子は煌めいて


綺麗の正解って、何?
「ない」から見つからないのか、それとも「ありすぎる」から見つからないのか。
本当の綺麗を見失っている「美容迷子」も多いのではないでしょうか?
美を創り出すアーティストとして、美を分析するエディターとして、それぞれの立場で綺麗を見つめてきた濱田マサル×松本千登世の、こっそり聞いてほしい「ここだけの話」。
まるで「因数分解」するように、綺麗のピースを集めます。



VOL.5「料理上手=美容上手」



松本千登世(以下CHITOSE):
マサルさんと話しているとき、「綺麗を急ぐ人が多いんですよね」という言葉にはっとさせられました。
アイメイクを教えてください、という人が圧倒的に多いのは、今すぐ変化が見える、ドラマティックな差が見えるからだ、と。
気持ちはわかるんですけど、ね。

濱田マサル(以下MASARU):
「レンジで、チン」の時代じゃないですか。
同じ料理を作るのでも、昔は3時間かかったところが、3分でできるでしょう?
手間ひまかかること、面倒臭いことはしたくない。
すべてがそのリズム感になっている気がしてならないんです。
美容においても、その場綺麗なら、その瞬間綺麗ならいい、「今」を生きてるって言うのかなあ?
簡単に、すぐに、綺麗になれないと嫌、待てない……。
中長期的に自分を育てるという感覚が持てない、あるいは知らないという人が多いのかもしれませんね。
雑誌などの企画でも、変わるのに時間がかかるスキンケアよりも、すぐに変わるメイクアップのほうが求められるのは、そのためなのだと思います。
ちなみに、僕は面倒臭いことが大好きなんですが(笑)。

CHITOSE:
ある週末の早朝、何気なく観ていた料理番組で、先生が「待てない人は、料理下手なんですよ」とおっしゃったんです。
例えば、何かを炒めるときに、つい、混ぜたりひっくり返したりしたくなるけれど、それをぐっとこらえて待つと、ほどよい焦げ目がつき、甘味や旨味になって味が深まる、味が育つ。
ところが皆、急ぐ、待てない……。
待てる人が料理上手、待てない人は料理下手。
ああ、美容も一緒なんじゃない? と思いました。
待てない人は、美容下手なのかもしれない、って。
あっ、私も面倒臭いこと、結構好きです(笑)。

MASARU:
えーっ!
全く同じことを考えていました。
僕は、ずっと前からメイクアップは料理のようだと思っていて。
「Makeup is like cooking」という本を書きたいと思っているくらい。
材料が大事、下ごしらえが大事、時間やタイミングが大事、そしてできあがったものを、どんな器に盛り付け、どんなバランスで見せるかも大事……。
もちろん、好き嫌いもありますし、ね。
すべてにおいてその人のセンスが試されること、手間をかけた分、美味しくなること……。
ねっ、同じでしょう?
だから、僕は料理のようにメイクする、という提案をしたいんです。

CHITOSE:
無意識だったけれど、確かに、共通点だらけですね。
どちらも、本来とてもクリエイティブなもので、パーソナルなもの。
メイクアップも料理も、その人に合っていないと「美しい」「美味しい」と感じられないから、工夫や調整が必要……。

MASARU:
綺麗は、時間をかけて手間をかけて、ゆっくりじっくり作ったほうが、自分のものになると思うんですよね。
ヘア&メイクアップ アーティストの僕が言うのも何なんですが、本当の美しさは、メイクの向こう側にある。
自力で作り上げた綺麗は、揺らがないとも思うんです。
どうしたら、その真実を皆さんに伝えられるかな? と寝ても覚めても考えています。

CHITOSE:
美容だけじゃないですね。
ファッションから暮らしまで、コンビニエントでインスタントなもの、もっと言えば「フェイク」なものも含めて、それを上手く取り入れることが時代に合った人のように見えるからか、それを綺麗と勘違いしがち。

MASARU:
手間ひまかけて自分を育てる……、そういう感覚や思考、生き方の姿勢が顔や肌に現れるから、美しいんだと思います。

TEXT : CHITOSE MATSUMOTO